2013.2.11提出
1.「部首」には、なぜ「首」という字がついているのですか。また私の使っている漢和辞典では「水の部」「手の部」とありますが、「部」と「部首」とはどう違うのですか。A 漢字を分類するとき、「水の部」「手の部」など、字が含む部品(主として意味をあらわす部品)ごとにグループに分ける方法がよく用いられます。その部品を、それぞれの部を代表する字(ここでは「水」「手」)として、部首と呼びます。首には首領、党首など、「かしら」という意味があります。
A 日本では、公式に筆順を決めたものは昔からありません。決まっていないものが変わるはずはありませんね。
ただ、当用漢字の制定後、昭和33年に、文部省が「筆順指導のてびき」という冊子を発行しています。これは大臣告示のような正式なものではなく、あくまで教育の便宜上作られたもので、これ以外の筆順を「否定しようとするものでもない」とのことわりが書かれています。
このてびきの作成の際に筆順のサンプルを書いた書家が、行書の筆順を楷書に持ち込んだため、戦前の教育を受けた人の筆順と違いが生じたとのことです(藤堂明保著「漢字の過去と未来」岩波新書)。この結果、「昔と筆順が変わった」とのうわさが広がったようです。
でも、このてびきに準拠した筆順が教科書に載ると、やがて教師も「この筆順でないと間違いだ」と教えるようになりました。私もそのせいで何度も×をつけられましたが、「正しい」「間違い」の根拠としてはあいまいなものです。
現在もこの「手引き」を遵守して教科書を作っている会社と、文字によっては独自の基準を使っている会社があるため、昔と今で違う筆順が教えられている場合があります。
筆順は、上記のとおり楷書と行書・草書では違いますし、甲骨文や金文の時代は全く違ったでしょう。今でも、美しく早く書けるのなら、こだわる理由はありません。皆が「これでないと間違い」という意識から卒業する必要があるでしょう。
A 手で文字を書く場合、活字とそっくりに書く人はいません。微妙に違う場合もありますが、この字のようにかなり違う場合もあります。現在、常用漢字表に記載されているのは「令」のほうですが、同表の「(付)字体についての解説」で、筆写の場合の字体の例が示されていて、この字の場合、手書きでは「令」と「令」のどちらでもよいとされています。
もともとこの字は屋根の下で人が平伏している形なので、令のほうが近いとは思いますが、手書きの場合は令のほうが優勢で、楷書や教科書体のフォントはほとんどこちらを採用しています。手書きを重視した結果、教科書会社も、小学校では令を採用しているのだと思われます。
A これらの字の「田」に見える部分は、実はそれぞれ成り立ちが異なっています。甲骨文の時代は、事物の形に従っていろいろな形をしていた部分が、字体が整理されて楷書が成立する過程で、同じ形になったものです。白川静著「常用字解」(平凡社)では、魚の「田」はうろこが交差する線、思・細の「田」は「ひよめき」(幼児の頭蓋骨の縫合線)の形、胃は胃袋の形と読み解かれています。